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緋月玲子は長身の涼しげな眼差しをして黒髪を上げた美しい容貌をしていたが、きっと結んだ口元が彼女の意志の強さを表していた。そして、左腕に巻かれた包帯が痛々しかった。彼女は右手を制服のポケットに入れたまま、
「お待たせ致しました。緋月玲子です。ここではなんですから外に出ましょう」
彼女はそう言うと草壁と篠田の二人を病院裏のひとけの無いところに連れて行った。
「この辺りで良いでしょう。どちらが草壁さんですか?」
そう聞いた。草壁は、
「私です」
美人を前に気恥ずかしそうに答えた。
「わかりました」
玲子は、そう言うなり、突然、右手をポケットから出すと、その手には小型ナイフが握られていた。
「エイっ」
玲子は急に篠田の方に向きなおると、篠田の額に向けて、ナイフを振り下ろした。
そばにいた草壁も何が起こったか理解できずにたじろいだ。篠田の額の傷がパックリ開いて、中から醜い肉塊のようなものが飛び出したかと思うと、篠田はその場にバッタリと倒れた。赤黒い煙が篠田の体を包んだ。煙が消えた時、そこには干からびた左足が転がっていた。
「鏡花先生からお電話を頂戴してお待ちしておりました。全ての事情はお聞きしております」
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