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草壁と玲子は翌日の昼前に東海道本線から高山本線に乗り換え、開通している駅まで行くと、そこで乗合馬車に乗り換えた。他に乗客は無く、草壁と玲子の二人だけだった。そして、ひとまず乗合馬車の終点の下呂温泉を目指して馬車は走った。今日はもう飛騨行きの乗合馬車は終わっていた。明日、また、下呂温泉から飛騨行きに乗り継ぐしかなかった。下呂温泉に近づいた頃には辺りには既に夜の闇が忍び寄り、馬車に驚いて飛び立つ鳥の羽音が不気味に闇に響いた。、突然、馬車の前に何かがドサッと落ちて来た。
馬車のぎょしゃが手綱を引いた。ぎょしゃがランプを高く掲げて闇を照らした時、三人は同時に息を呑んだ。馬車の前に血にまみれた首の無い女の死体が糸の切れた操り人形のように地面に転がっていた。
「草壁さん、どうやら、私は魔物に歓迎されてはいないようですね。それとも、これは歓迎の挨拶かしら」
下呂温泉に着いて、飛騨の鏡花に電話を入れようとしたが、電話はつながらなかった。
「おかしい。電話がつながらない!」
草壁が舌打ちをした。
「魔物が連絡を取らせまいと電話線を切ったのでしょう。油断できませんね。とりあえず、今夜の宿を捜しましょう」
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