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「先生、本気ですか?先生の書かれとる小説の話とは違いますよ。私達は現実の社会に暮らしとるんです。おわかりですか?飛行機なるものがですよ。空を飛ぼうと言う時代にです。そんな馬鹿げた魔物なるものが本当に存在すると先生は本気で、お信じになられてらっしゃるのですか?」
鏡花は静かにうなずいた。
「馬鹿な!」
所長は不機嫌そうに窓の外に視線を移したまま、
「鉄道の計画はです。私よりも、もっともっと上の方の人間が決めたことなんです。私には何の権限もありゃしません。今さら、工事計画の変更だなんて!しかも、言い伝えに出てくるバカバカしい魔物だなんて誰が言えますか!」
「では、どうあっても?」
鏡花はにじり寄った。
「くどいですな。先生、どうぞ、お帰り下さい」
「何が起こっても知りませんよ」
そう言うと、鏡花と草壁は部屋を出た。
数日後、緋月城跡の眼下にあるトンネル工事現場において、トンネル工事の地鎮祭が緋月八幡宮の宮司を招いて行われる事になった。当日は町長はじめ町の有力者が皆、顔を揃えた。儀式は厳かに進んだ。宮司のお祓い、そして、祝詞が読まれた。その時、異変が起こった。
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