飛騨妖魔変

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早朝、鏡花は草壁からの連絡を受け、トンネル工事現場に急行した。行ってみると既に草壁が待っていた。 「先生、恐れていた事が起こりました!」 草壁は興奮を隠さなかった。 「犠牲者は何人だね?」 「おそらく、3人だと思いますが」 「どうしたんですか?はっきりわからないのですか?」 「ええ、遺体が原型を留めていないのです。まるで、何者かが骨ごとバリバリと喰らったようなありさまです。所長を通じ警察にも話を通してありますから、現場に行ってみましょう!」 二人は現場に入った。暗いトンネルの中をカンテラを各々提げて足元を闇に取られながら進んだ。最奥部まで行くと、天井からポタリと雫が落ちてきた。鏡花がハンカチを出して拭くと、それはどす黒い血だった。やがて、闇に目が慣れると、天井と言わず、周囲の壁と言わず、べっとりと血が飛び散っていた。地面にも骨や肉片が塗りたくったように闇に照り輝いている。酸鼻を極めた状況だった。闇の一番奥を指して、鏡花が口を開いた。 「草壁さん、見たまえ。石の箱だよ。魔物はこれに入っていたに違いないね」 草壁が見ると石の箱が蓋をはじかれたようにして口を開けていた。
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