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「あーりゃりゃ、すっかり葉月ちゃんに集中しちゃったみたいだねー……まったく、もう。勇次郎ってばおバカさんだなぁ。まあ、そこがいいところなんだけどさっ」
手に持つ銃口を下に向けてぷらぷらと揺らしながら、明人は勇太郎に笑いかけた。
「しっかし、葉月ちゃんが動くとは思わなかったな。あんなに臆病でへたれで性格の悪いジミドリのくせに、勇太郎のことを助けるとかさぁ。スタンプ押すとしたら、よく頑張りましたって感じかな? その頑張りが報われたかどうかはともかく、ね?」
ちらりと葉月に向けられた視線には、普段溶け込んでいる陽気さの欠片もない。
明人は、葉月を見て冷笑を浮かべていた。
「……明人。お前、グリーンのこと嫌いなのか?」
「嫌いだよー? 大っ嫌い。あーいう甘ったれ見てるとさぁ、イライラするんだよねー」
軽い口調で辛辣な言葉を吐くと、明人は再び勇太郎にへらりと笑いかけた。
「というわけで、俺はそろそろおうちに帰るっす! 先輩、もう二度と会うことないっすけどまあ、元気にやってくだせぇ!」
「誰が先輩だよ。しかも、キャラ設定適当すぎるだろ。最後どうした」
踵を返した明人に、勇太郎は焦らず話し掛けた。
明人の性格からして、本当に場を後にするつもりならとうに姿を消しているだろう。今の行動は全て意思表示の一種。そう思ったからこそ、勇太郎は無理に引き留めることをせずに明人に声を伝える。
「あと……お前の今のおうちは、極致正義員養成学校の学生寮だからな。それか、神奈川にあるお前の実家だろ」
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