第一章

11/25
前へ
/200ページ
次へ
* 「あーりゃりゃ、すっかり葉月ちゃんに集中しちゃったみたいだねー……まったく、もう。勇次郎ってばおバカさんだなぁ。まあ、そこがいいところなんだけどさっ」  手に持つ銃口を下に向けてぷらぷらと揺らしながら、明人は勇太郎に笑いかけた。 「しっかし、葉月ちゃんが動くとは思わなかったな。あんなに臆病でへたれで性格の悪いジミドリのくせに、勇太郎のことを助けるとかさぁ。スタンプ押すとしたら、よく頑張りましたって感じかな? その頑張りが報われたかどうかはともかく、ね?」  ちらりと葉月に向けられた視線には、普段溶け込んでいる陽気さの欠片もない。  明人は、葉月を見て冷笑を浮かべていた。 「……明人。お前、グリーンのこと嫌いなのか?」 「嫌いだよー? 大っ嫌い。あーいう甘ったれ見てるとさぁ、イライラするんだよねー」  軽い口調で辛辣な言葉を吐くと、明人は再び勇太郎にへらりと笑いかけた。 「というわけで、俺はそろそろおうちに帰るっす! 先輩、もう二度と会うことないっすけどまあ、元気にやってくだせぇ!」 「誰が先輩だよ。しかも、キャラ設定適当すぎるだろ。最後どうした」  踵を返した明人に、勇太郎は焦らず話し掛けた。  明人の性格からして、本当に場を後にするつもりならとうに姿を消しているだろう。今の行動は全て意思表示の一種。そう思ったからこそ、勇太郎は無理に引き留めることをせずに明人に声を伝える。 「あと……お前の今のおうちは、極致正義員養成学校の学生寮だからな。それか、神奈川にあるお前の実家だろ」
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2021人が本棚に入れています
本棚に追加