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「明人様、もうよろしいのですか?」
「うん、もういいよ。帰ろう」
葉月の攻撃を受け止めながら勇次郎が発した問いに、明人は穏やかにすら聞こえる声音で返す。
「はい。明人様の仰せのまま、にっ!」
力の入った語尾に合わせ、勇次郎は鍛え上げた膂力をもって葉月の剣を無理矢理弾く。そして、体勢の崩れた葉月に体当たりを仕掛けた。
「うあ……っ!」
肩口からキレイに懐に入り込んで来た体当たりを受け、小柄な葉月は容赦なく吹き飛んだ。後頭部を打ち付けることは免れたものの、背中から着地したそのまま地面を擦り、一秒にも満たない内に停止する。
「せっかくクソ兄貴を倒せるとこだったのに、邪魔しやがって……お前はまた今度、絶対に潰す」
体勢を整えようとする葉月の頭上から、物騒な宣告が降り注ぐ。
勇次郎は最後に葉月を一睨みすると、踵を返して明人の下へと駆け寄った。
「なにやってんだ馬鹿レッド! くそ、逃がすか……っ!」
すぐさま立ち上がり、勇次郎を追って駆け出した葉月だが――
「はーい、葉月ちゃんはどいてねー」
からかうような声と共に、連続して銃声が響いた。
握り締めていた手に凄まじい衝撃が伝わり、弾かれた剣に引っ張られて葉月は転倒してしまう。
「なんだよ、今の……」
低い声で毒づき、舌打ちをする。
明人が葉月に対して行ったことは、特に複雑なことではない。剣先、中心部、根本、と間髪入れずに連続して弾を当て、剣全体に衝撃を与えたのだ。
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