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現在青年がいる位置からレイチェル達の元へ向かうには、途中で葉月、勇太郎、そして、レイチェル達を見張っている零士の傍を通らなければならない。
絶対正義幹部の青年からすれば、敵主力の塊に足を踏み入れることになるのだが、
「分かっていると思うけど、僕を攻撃したら……」
青年はそこで口を噤むと笑みを深くし、そのまま悠然と歩き出した。
その両手はトンファーを握っているものの、特に構えるわけでもなく体の脇で歩調に合わせて揺れている。
「……ちっ」
隙だらけの青年が前を横切り、葉月は舌打ちをした。
鋭い舌打ちを聞き付けた青年は憎々しげに睨み付ける葉月に視線を遣り、わざとらしく目を丸くする。
「あれ? 君って、もしかして……ジミドリ君かい?」
「…………」
その言葉に、今度は葉月が目を丸くする番だった。
素直な反応を見た青年は足を止め、くすくすと笑みをこぼす。
「あ、その反応。予想適中、かな?」
「なんで……」
「知ってるのか、かい? それはね、秘密だよ。ただ一つだけ……」
青年は葉月を見つめ、楽しげに口を開く。
「君の呼び名、絶対正義の中ではジミドリで固定してるよ?」
「……え」
「ふふっ。ジミドリってあだ名、実態に即してるよね……君、本当に地味だと思うよ」
再び目を丸くした葉月を見て、青年は堪えきれないと言うように笑みを漏らす。
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