2021人が本棚に入れています
本棚に追加
「…………っ」
意外な発言に驚き思考が鈍ってい葉月だったが、その内容を理解するにつれて怒りと羞恥に頬を赤く染めあげた。
「……ふざけんな」
「いや、僕に言われてもねぇ。そんなに地味って言われるのが嫌だったら、普通は前髪を切るなり髪を染めるなり、口調を変えるなり何なりするんじゃないのかい? まあ、地味じゃない僕にはどうとも言えないけど」
射殺さんばかりの視線で突き刺す葉月に肩を竦めて見せると、青年は再び歩き出した。
「な……待てっ!」
「待たないよ? 君をからかうのは面白そうだと思うけど、ほら。早くしないと黄色さんに怒られてしまうからね」
怒り心頭の葉月を相手にせず台詞に合わせて歩調を早め、そして。青年は勇太郎へと近付いていく。
「ふぅん……レッド君は結構聞き分けがいいんだね? やっぱり、ウルティマレッドに敬意を持ってる人達からすれば、ここは力付くで金糸雀クンを奪い返そうとするレッド君を見たいんじゃないのかな?」
人当たりのよい笑みを浮かべた唇から刺を含有した言葉が滑り出て、成り行きを見守るしかない勇太郎を挑発する。
「…………」
「……はあ。どうやら、君を尊敬する人達からすれば、君は期待外れだったみたいだ」
それでも押し黙ったままの勇太郎を見て、青年は溜め息に呆れを滲ませた。そのまま、勇太郎の脇を通り抜けようと歩を進める。
「こうして、君は兄という称号も剥奪されて、仲間という称号も剥奪されて――」
青年は歌うように呟き、段々と声量を下げていく。そして、
「……遂には、ヒーローという称号も剥奪されるんだね」
擦れ違うその時、そっと勇太郎に嘲笑を囁いた。
最初のコメントを投稿しよう!