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反応を待たずに、青年は勇太郎を置き去りにした。
「…………」
鋭い言葉の刃によって抉られた傷の痛みを放出することすら出来ず、勇太郎はただ立ち尽くして唇を噛み締めた。力を込めすぎた拳は小刻みに震え、唇には血が滲むが、構わず更に力を強くする。
「…………っ!」
緩やかに遠ざかっていく気配を背中に感じながら、勇太郎は胸の奥底から沸き上がる奔流を血と共に飲み下した。
青年は振り返らず、レイチェル達を目指して歩き続ける。
「さて……君は、ブルー君で合っているかい?」
「そうだが」
無防備に過ぎる態度で近寄ってきた青年を一瞥し、零士は眉をひそめた。
「おや。君は普通に会話が出来るんだね」
その言葉に滲む揶揄の響きを感じ取り、零士は更に眉間の皺を深くした。
「……無論、会話程度ならいくらでも出来る。そして、それは俺だけではない」
「そうかな?」
青年は口元に手を宛がい、くすりと笑う。
「ジミドリ君は怒ってるし、レッド君は一言も返事をしてくれなかったのだけれど、これは会話が成り立つとは、一般的には言いにくいんじゃないのかな?」
「ふん。会話をする必要と理由があれば、自ずと口を開き、相手に伝える。貴様相手には会話をする理由と必要がなかった、それだけだろう」
「わお。ブルー君は、随分カッコいいこと言うね」
素っ気ない零士の対応を歯牙にもかけずに、青年は爽やかにすら見える笑みを張り付けて会話を続ける。
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