第一章

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 零士は思い切り青年を突き放し、自身も後方へ跳躍して間を取った。 「言われるがままのレッドも、追撃しないグリーンも、イエローも、全てが気に食わない」  銃剣を片手で振り払い、怒気の滲む声音で告げる。 「何を怯える。この極致正義自衛軍特殊戦闘部隊に任命され受諾したその時、守るべきものの為に己の命を、仲間の命を危険に晒す覚悟を決めたのではなかったのか」 「……っ!」  勇太郎と葉月は、揃って息を飲んだ。  極致正義自衛軍特殊戦闘部隊――ウルティマレンジャーの任を背負ったその時、勇太郎達は上層部に対し誓言を唱えていた。 『世界を平和の極致へ導く為にこの身を捧げ、極致正義の名の下に剣を振るうことをここに誓う』  極致正義起源より唱えられ、最早形式化している部分すらあるこの文句は、極致正義員の在り方を確認する為のものだ。  「世界を平和の極致へ導く」為には身を粉にし、他人を傷つけることへの躊躇を持たないよう示唆している文句――だが、零士が言っているのは、この誓言のことではない。  勇太郎達は、各々形式的な誓約以外にも誓いを立てていた。  ある者は、幼い憧憬の存在を赦す為に。  ある者は、大切な人に幸せをもたらす為に。  己の心に刻んだ誓いは一人一人異なり、また、その存在を口外する必要もない。故に、零士が他人の誓いを知る由はないのだが――――― 「おまえらが覚悟に背くと言うのなら、俺は一人でも前を見据えよう。半端者のおまえらはそこで見ているがいい」  零士は青年を睨み付けながら、不器用な激励を口にする。image=473066904.jpg
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