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「……へえ。やっぱり、ブルー君はカッコいいんだね。普通、そんなこと言えないんじゃないのかな?」
「ふん、普通など知らんな。俺は俺の思ったことを口にし、実行するだけだ」
青年に冷淡な声音を浴びせ、零士は銃剣を握る手に力を込めた。刃先がまっすぐに青年を捉える。
湿り気を孕んだ風が雲を流す。いつの間にか、空は一面灰色に覆われていた。
「おっと。申し訳ないけど、僕は戦わないよ?」
不穏な空気が漂う最中、青年は緊張を吹き消すように笑顔を浮かべた。
「今戦っても僕に利益がないと思うからね。攻撃を仕掛けてきたことも、特別にお咎め無しということにしておいてあげよう」
零士に片目を瞑ってみせると、青年は素早くレイチェルとマリーに近寄り、二人を左右に抱えた。
「逃げるつもりか……!」
「最初からそのつもりだったはずだけどね。君達の反応が楽しくてつい遊んじゃったけど、いい加減黄色さんに怒られてしまいそうだし退散させてもらうよ」
青年は勇太郎達全員へ視線を巡らせると、最後にもう一度笑みを浮かべ直してから地を蹴った。少女とはいえ人間を二人抱えているとは到底思えない速度で駆け、ものの数秒で黄色い少女達の下へと到達する。
「ちょっとさぁ、なに遊んでるんだよ。おっそいんだけどぉー?」
「はいはい、すみませんでした。文句ならブルー君に言ってください」
青年は腕を組み文句を言う少女に苦笑を向け、責任を零士に擦り付ける。
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