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鳴り続ける携帯電話を取り出して相手を確認し、勇太郎は目を丸くする。
「カヲリさん……」
緩慢とした動作で携帯電話を開き、耳に当てた。
『あ、勇太郎君!? 繋がってよかったわ、大丈夫?』
携帯電話の向こう、安堵の声を皮切りにカヲリが喋り出す。
『早速で申し訳ないけど、帰還してきてちょうだい』
「え……このまま、帰還ですか?」
答えながら、勇太郎は周囲へと視線を巡らせる。ニーニとの戦闘のせいで地面は抉れ、通りに立ち並ぶ小売店やお土産屋は崩壊の憂き目に遭っている。
戦闘によって建物などに被害を出してしまった場合、修復は出来ずとも勇太郎達は瓦礫を片付け、壁や屋根を応急的に補強して更なる崩落を防ぎ、処理班の負担を減らすようにしていた。
『ええ、今すぐ入場ゲートまで向かって。捕捉してこっちに呼び寄せるわ。極致正義員を派遣しているから、避難している一般人や捕縛した絶対正義員達のことは平気よ。とにかく、誰にも見られないよう気を付けて帰還すること。お願い』
「…………」
カヲリの有無を言わせない口調に圧され、勇太郎は黙り込んだ。まだここには、伝えなければいけないことも、やらなければいけないこともある。しかし、
「……はい」
結局は首肯し、重い声で応えた。
今の勇太郎には、カヲリの指示に従うことしか出来なかった。
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