第二章

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「傷自体もあまり大きくは無いんだけど、傷口周辺組織の損傷が酷くて……傷付いた皮膚を切除するにしても、治癒促進魔法を掛けて縫合するにしても、少し痕が残ってしまうみたい」 「……痕」  噛み締めるようにその単語を復唱し、勇太郎は俯いた。  勇太郎自身はいくら傷付こうが、傷痕が残ろうがお構い無しといったスタンスで極致正義員としての戦闘に臨んでいる。  しかし、あいもそうとは限らない。それどころか、一般的な思想では傷痕を好ましく思う女性は少ないだろう。 「俺のせいで……」  あいは勇太郎を庇い、その結果負傷した。 『……レッド、危ない!!』  ぎゅっと目を瞑れば、目蓋の裏に浮かび上がる大切な人の姿。  柔らかい手のひらで突き飛ばされ傾ぐ視界の中、遠ざかるあいは、気丈にも勇太郎に向けて笑みを浮かべる。 『…………』  その唇が開き、言葉を紡ごうとした瞬間。轟音が二人を引き裂き、笑みを残した口元を華奢な体とともに吹き飛ばした。 「……くそ。なにが仲間を守る、だ。偉そうなことばっか言って、このザマかよ! 結局、俺のせいであいは……!」  自責の念に駈られ、勇太郎は拳を握り締めた。 「…………」  カヲリは、そんな勇太郎を痛ましい目で見守ることしか出来ない己を呪う。  沈黙が病室を支配する。カーテンを揺らしていた風さえもが鳴りを潜めた無音の中、二人とも陰りを帯びた瞳を伏せて口を閉ざし――――― 「……勇太郎、それはちがうよ」  掠れた声が、勇太郎の後悔を否定した。
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