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黒いフェザーストールがばさりと風に靡き、存在を主張する。
「さっすがウルティマレッド様。咄嗟にガードするとかスゴいねー、尊敬しちゃう」
吹き荒れる熱風に目を細め、明人は口元を歪めた。
「でもでも、やっぱり尊敬なんかしてやんないもんねー! せめてさ、葉月ちゃんくらいはやっつけておきたかったんだけどなぁー、もうっ! 勇太郎のいじわる!」
ふざけた口調と共に不敵な笑みが消え去り、いつもの明人が現れた。
いつも通りにしか見えない表情で、しぐさで、明人は葉月を仕留め損なった憤慨を勇太郎にぶつける。
「な、んだよ……それ……」
掠れた疑問が葉月の口唇からこぼれ落ちる。
目の前に広がるのは、燃え盛る炎。突如として顕現した炎の壁が弾丸を弾いて葉月の命を救い、明人を拒んでいた。そして、
「イエロー……?」
炎壁を作り出した張本人である勇太郎は、炎壁を維持したまま呆然としていた。
二メートル以上の高さの炎壁から軽快な足取りで離れながら、明人はにっこりと笑って問うた。
「え、イエローってだーれ?」
「……誰って、お前しかいないだろ。ウルティマイエローはお前、だろ?」
「いやいや、違いますけどー?」
勇太郎の震えた問いを、明人は当たり前のように否定した。
そのまま立ち尽くしているわけにもいかず、葉月も明人と同じように炎壁から離れた。
開けた視界が明人を映す。
明人は、見慣れた笑顔を浮かべていた。
「俺、絶対正義の諜報員だからね? 極致正義のウルティマイエローなんかじゃないよー?」
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