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「あい……?」
「おはよ、勇太郎。カヲリさん」
「ダメよ、あいちゃん。安静にしてなきゃ」
上半身を起こそうとするあいを、カヲリは慌てて制止する。
「大丈夫です。話が終わったら、またすぐ横になるから」
しかし、微笑みと共に言われてしまい、カヲリはゆっくりと身体を起こすあいを見守ることを余儀無くされる。
「…………」
一方勇太郎は、あいが慎重に身を起こすのを手伝うわけでもなく、ただその姿を見つめていた。
何かを堪えているのか、体の脇から動かない両拳には震えるほどの力が込められている。
程無くして上半身を起こしたあいはそっと息を吐き、勇太郎へと視線を向けた。
「勇太郎、ごめんね。怪我したのは私のせいなのに、勇太郎は優しいから責任感じちゃうよね」
「違う、あい。俺は優しくなんか……!」
痛心に歪む表情を見て、勇太郎は咄嗟に情けなく揺れた声で返す。
「優しいよ。勇太郎はね、きっと、誰よりも優しいの。私は知ってるよ」
確固たる意思を持って紡がれる言葉に、勇太郎が慌てて生み出した言葉は優しくはね除けられた。
あいは、ぎこちなく笑んだまま勇太郎とカヲリへ順に視線を巡らせる。
「勇太郎の優しさおかげで、やっと動けたの……やっと、皆にも言う決心がついたから」
「あいちゃん……」
気遣うように名を呼ぶ声に頷き、あいははっきりと言葉を紡ぐ。
「私の家が絶対正義と繋がっていること、次の会議で皆にもちゃんと言わなきゃ」
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