第二章

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「えぇー! いつ帰ってくるか分からないの!? イエローさんの事だから、きっと寮に戻ってくる時にファンが出迎えそうだし、俺もそれに混ざりたかったのにー……もう、みどりんのばかっ!」 「……多分、そういうのがあるから公開されないんだと思うけど。あと、篠田。みどりんって呼ぶな。そのプリン頭コーヒーゼリーにするぞ」  ―――――きっと、大丈夫だよな。  憤慨したような、どこか子供っぽい口調に呆れを返しながら、葉月は気付かれないように安堵の息を吐いた。 「えーやだぁ! コーヒーゼリーとかだっさい……じゃなくて、じゃあ分かったら教えてよー!?」 「……考えとく」  未だ食い下がろうとする克彦にはもう取り合わずに、葉月は自席へ腰を降ろした。 「…………」  黙々と鞄の中身を机に移しながらも、葉月の思考を占めるのは学業とは程遠いものだった。  ―――――こうも不信感を抱かせないとか、さすがだよな。  賛辞とも取れる言葉を内心で呟きながらも、その心の声音は苦々しい。 「……はぁ」  葉月は溜め息を吐くと、机に伏せた。  光量を失った視界の中、明るい雰囲気の教室から目を逸らすようにそっと目蓋を閉じる。
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