第二章

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 ほら、と滑った璃理の視線を追えば、教卓には明るい茶髪を腰まで垂らした担任の姿があった。 「早く席に着きなさーい!」  教師の呼び掛けに応えて、SHRの合図が鳴ったらしい今もまだ好き勝手に立ち歩いていたクラスメート達が各々の席に向かう。 「いつの間に……」 「葉月が気持ちよさそーに寝てる間に、よ。とりあえず葉月、おはよう」  花が綻ぶように咲いた璃理の笑顔を直視し、葉月は咄嗟に顔を背けた。 「……ああ」  わざと低めに出した声で、ぶっきらぼうに短く返事をする。  そんな葉月に、璃理は僅かに眉をつり上げた。たんっと机に手を付くと、顔を近づけて葉月を覗き込んでくる。 「む……なによ、その反応。挨拶くらい返しなさいよ」 「……うるさいな」 「ちょっと、誰がうるさいのよ! 挨拶くらいしなさいよジミドリ」 「はいはい、おはようおはよう」  ――くそ。  璃理と目を合わせることを頑なに拒みながら、葉月は盛大に顔をしかめる。  ――……こいつ、なんでこんなに無防備なんだよ。 「席、座れよ」  腕の近くに付かれた手から距離を取り、葉月は窓の外へと視線を逃がした。
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