第二章

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*  終業のチャイムが軽やかに跳ね回り、それまで授業に縛られていた学生達の心が一斉に解放される。  部活に行く者もいれば、そそくさと荷物を纏めて帰路に着く者もいる。己の世界しか映さない瞳もあれば、脇目も振らずに友人の下へ向かう横顔も存在する。生徒が学校から解き放たれ、各々の歯車を回し始める放課後が訪れた。  葉月もその例に漏れず、素早く身支度を整えるとウルティマレンジャー専用オフィスへ向かうべく教室を後にした。  廊下には生徒達がたむろしていた。下手にうろついていると、克彦のように明人についての噂を確かめる為、話し掛けてくる者がいるかもしれない。そう考えた葉月は俯き、ざわめきの中を足早に通り過ぎていく。 「葉月!」  溢れる音を縫い、軽い足音が葉月へと辿り着いた。 「もう、どうして私を置いてけぼりにするのよ!」  横に並び文句を言う璃理にちらりと視線を向けると、葉月はすぐさまそっぽを向いた。 「支度が遅いアホサキが悪いんだろ」 「あのね……私が遅いんじゃなくて、ジミドリが早すぎるだけなのよ」  呆れたような語調で言われてむっとすると、言い返そうと口を開く。しかし、 「……イエロー、帰ってくると思うか」  僅かな逡巡を経た後に開いた唇から溢れたのは、葉月自身も予期していなかった言葉だった。
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