第二章

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 視線が集まったのを確認すると、あいは浮かべていた笑みをそっと消す。  ますます不可解に眉をひそめる三人に、あいは一瞬寂しげな表情を見せた。しかし、それも一瞬のこと。あいはすぐさま真剣な眼差しを取り戻すと、はっきりと言い放った。 「私の家――桃園家現当主は、絶対正義と繋がってるの」 「それって……」  あいと知り合ってからまだ日の浅い璃理が、それでも隠し切れない動揺を漏らす。 「璃理ちゃんが想像してることで間違いないと思う」  無理矢理頬を歪めて苦笑してみせると、あいは告白の内容にショックを受けて押し黙る零士と葉月へと視線を投げ掛けた。 「零士さん、葉月君、ずっと言えなくてごめんなさい。勇太郎とカヲリさんだけには打ち明けてたんだけど……本当に、本当にごめんなさい」  サイドテールに纏めた髪が流れ、さらさらと机上に広がる。深々と下げられた頭を前に、零士と葉月は慌てて動揺を抑え込みに掛かった。 「理由があるのだろう? 無闇やたらに話すことでもないようだしな、むしろ黙っている方が当然だと思うが」 「……ブルーの言う通り。別に、無理に言うことじゃないと思うし、気にしない」 「二人とも……ありがとうございます」  二人の言葉につられて一度は顔を上げたあいだったが、ともすると自戒を解いてしまいそうな己に気付き、再度頭を下げた。  あいはゆっくりと姿勢を正して、前を見据える。その膝の上――机の影となる場所で、小さく白い手のひらが、まるで祈るように組まれた。
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