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「く……っ!」
突然の攻撃に、勇太郎はワンテンポ遅れて手をかざした。乾いた銃声が、燃え盛る炎にそっと包まれ消滅する。端からそんな陳腐な攻撃が通るとは思っていなかったのか、明人は追撃することもなくゆっくりと足を踏み出した。
急ぐこともなく炎壁を迂回し、まっすぐに進行方向を見据えて歩く。
その視線の先では、黄色い少女達が待っている。
「ま、とゆーわけで、俺は絶対正義に帰りまーす。じゃあねー」
「な……明人! ふざけんな、簡単に諦めるわけねーだろ!?」
当然のように横を通り抜ける明人に、詰め寄ろうとする勇太郎。困惑した表情のままだが、明人と仲間として扱うという決意だけは揺るがないようだ。
「えー。ちょっと、迷惑なんですけどー? いつからストーカーみたいになったのよ、お母さん悲しいわよっ!」
ふざけた口調で勇太郎の心を撥ね付け、明人はさっと手を降った。
「悪いけどさぁ、あのストーカーの足止め頼んでもいーい?」
「……仰せのままに」
明人の呼び掛けに応え、立ち並ぶ建物の脇から人影が滑り出てきた。帯剣している点以外は従者と呼ぶに相応しい格好をした少年は、明人の前に跪き頭を垂れる。
「そんな畏まんなくてもいーのに」
「自分は明人様の従者ですので」
苦笑した明人に促され、少年が立ち上がる。
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