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ゆらり、と少年の炎と同じ色をした髪が風に揺れる。
「それでは、そこにいる……ウルティマレッドを、足止めすればいいのですね」
「うん、お願い。普段の勇太郎ならちょっと荷が重いかもだけど、今は大丈夫でしょ。思いっきり動揺してるし、それに何より……ね」
言葉を切ると、明人は勇太郎へと視線を向けた。
「……なんだよ?」
意味深長な言葉と視線に戸惑い、勇太郎は眉を寄せる。
「ふふっ、気付かないのー? 勇太郎って案外薄情だねぇ」
辛辣な言葉とは正反対の柔らかい笑みを浮かべ、明人は少年へ視線を戻した。
最後にもう一度、わざとらしくちらりと勇太郎を見てから、明人は少年に笑いかける。
「大丈夫。あのへたれはまともになんか戦えないよ、勇次郎」
「え……ゆう、じろう?」
その名前を聞いて、勇太郎は動揺を露にした。驚愕に目を見開き、すぐに泣きそうに顔を歪めて明人と少年――勇次郎の顔へ交互に視線を向ける。
「気安く俺の名前を呼ぶな」
勇次郎は勇太郎に向かって心底不愉快そうに吐き捨てると、剣の柄へと手を伸ばした。
「ウルティマレッドの足止めは自分にお任せください、明人様。さあ、早く幹部様方の下へ」
「勇次郎、ありがと。さっすが俺の腹心の部下だねっ!」
鞘から抜く勢いそのまま、勇次郎は剣を降り下ろした。
「明人様の邪魔はさせない……!」
磨き抜かれた剣身が空を切り裂き、明人と勇太郎を隔てる。
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