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『世界で一番美しい』などという、無理難題ともとれる世迷い言に、女はピンときた。
――あいつだ。
髪の先までもが宝石のように輝く、この世で最も憎らしい存在を思い描き、女はほくそ笑んだ。
「男でも……女でも構わないのね?」
「ええ、構いませんよ。その者が本当に美しいのならば」
これは運命だと――女はそう思った。
女はフードを取り、顔を上げて笑った。会心の笑み。
「いいわ……くれてやるわ。いくらでも、望み通りに!」
勝利を確信した女の高らかな哄笑が、鬱蒼と生い茂る木立の合間を縫い、空へと響いた。
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