2/17
前へ
/154ページ
次へ
「えぇ~?今年の夏休みもおじいちゃんの家に行くのぉ!?」 夏休み前日。 山盛りの宿題と、あまりよろしくない成績表と、夏休みへの膨らんだ期待を持ち帰った僕。 1ヶ月半の夏休みは長いようで短い。 ラジオ体操はダルいけど、この前買ったばかりのゲームをクリアしようとか、小学校のプールへ行こうとか、色々ワクワクしていたところだったのに……。 今年も母方の祖父母の家に帰省するらしい。 「そうよ。だってこっちは暑いじゃない。幸人(ユキヒト)だって、涼しいおじいちゃん家の方が宿題はかどるでしょ?」 「でもあそこ、ゲームできないじゃん……」 「何言ってるの!夏休みにぐーたらするなんて許さないからね。ゲームばっかりしてないで、たまには家の手伝いもしなさい」 「ええ~!?」 小学4年生の僕の辞書に”避暑”なんて言葉は当然なくて。 避暑だろうがなんだろうが、都会の夏も、田舎の夏も、僕にとっては暑いものは暑いのだ。 ゲームもなければプールもなくて、遊んでくれる友達もいない。 そんなところに、誰が好き好んで行きたいと言うだろうか。 「明後日には出るからね。着替えと宿題、忘れずに用意しときなさいよ」 「はぁーい………」 今年も、憂鬱な夏休みがやってくる。
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加