ふたりの幸せ

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「もう......二人で住むって考えるのやめよ」 「は?」  そう言う、加奈の声は震えていた。小さい手が、俺の着ているパジャマの袖を掴む。 「今日は楽しかった......でも、この話になると楽しくなくなった」  鼻をすする音が聞こえる。泣いてるみたいだ......。 「だから、もういい。お兄ちゃんも、部活とかやって、学校楽しんで」 「......加奈は、いいのか?」 「......いい。頑張る」  自然と、体が動いていた。手を背中に回し、ぎゅっと抱きしめる。 「ごめんな......」 「謝んないでって、言ったじゃん......」 ーーーーーーーー  それから、俺のバイト代は全額生活費に当てることになった。相変わらず飯はねこまんまがメインだが、肉を買う回数が増えた。親父は相変わらず何も言わないけど。  あと、俺は美術部に入った。二年の秋からという遅いスタートだが、別にコンクールとか賞とかは考えていない。 「お兄ちゃん!ありがとう!」  ただ、描いた絵を渡した時の、加奈の笑顔が見たいだけだったから......。                    fin.
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