5人が本棚に入れています
本棚に追加
「私はー蛙のピョン子だよー!今からー産まれたばかりのおたまじゅ......おたまじゃくしの所に行ってきまーす!」
でかい目が描かれている緑色の帽子を被り、小さい劇場となった体育館の壇上で蛙になっているのは、妹の加奈。今日は幼稚園児による劇の発表会だ。
三十代と思われる奥様方に混じって劇を観ている俺は、中学二年の学生である。ちなみに土曜なので学校は休み。
ぶっちゃけ言うと恥ずかしい。時々妙な視線を感じるし、場違いなのは分かっている。
まあ、加奈が喜ぶならこんくらいどうって事無いけど......。にしても、ほんといい顔してんなー。
ーーーーーーーー
劇終了後、二人で手を繋ながら家に向かう。雨が降っているので加奈はバスで帰ってもよかったのだが、「お兄ちゃんと帰りたいから歩く」だそうだ。
「お兄ちゃん、どうだったー?」
ピンクのレインコートに身を包んでいる加奈が、何か期待してそうな眼差しで聞いてくる。
「すげー可愛かったぞ」
「どの位?」
「びっくりする位。俺は感動した」
「えへへー......」
笑顔のまま、顔を赤らめる。そんな顔見てると、こっちもなんか嬉しい気分になるから不思議だよ。
最初のコメントを投稿しよう!