ふたりの幸せ

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 そんな俺達とは対照的に、天候は悪い。  決して弱いとは言えないほどの雨。家に着くまでの三十分、その中を歩き続けなければならない。  俺はさっさと帰りたい。けど、加奈は違う、“家が怖い”のだ。正確には、四十代のくせに働きもしないで、デカダンスな生活を送っている親父に恐怖心を抱いている。  四年前に母さんが病気で死んでから、おかしくなった親父。気にくわないことがあるとすぐに怒鳴り、酒を求める。手を出してくる事は無いが、それでも幼い加奈にとっては十分に恐ろしかった。  だから、今日も俺が劇を見に行った。加奈は親父なんかより、俺に見て貰いたかったんだ。 「......お兄ちゃん」 「ん?何だ?」  家まであと百メートル程の所で、加奈の足が止まる。その顔に、さっきまでの明るい雰囲気は無い。 「いつから......二人で暮らせるの?」 「......」  俯きながら発せられるその言葉に、すぐ返事する事が出来なかった。言ったら、悲しむだろうから。 「......ごめんな」 「......謝んなくていいよ、お兄ちゃんが頑張ってるの、分かってるから」  結局謝る事しか出来ず、暗い雰囲気のまま、再び歩みを進めた。
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