1 ★ 朝×朝子

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『ごめんな、朝子』 そういって、彼はあたしの頬から伝わる涙を親指で拭った。 優しい指… いつだって、彼は優しかった。 『………こんなことぐらい、どうってことない。もう、オレのためにお前が傷つくのは嫌なんだ』 『……だから、もう泣くなよ』 そっと両手で、あたしの顔を優しく包みこむ。 溢れかえる涙で彼の顔が見えない。 『………ぅう……ひっ…く……』 涙がとまらない。 もう、彼に会えない… 今日で最後なんて…… 『…ったく、ひでぇ顔だなぁ…ボロボロじゃんかよ。 ……可愛くねぇの』 瞳からあふれる涙を、彼の唇がついばんでく。 『……しょっぱっ………なんだ、涙ってしょっぱいのな』 彼は笑いながら、あたしを抱きしめた。 そして、前髪を右手で優しく撫で、あたしの唇にそっとキスをした。 『……好きだよ、朝子…』 .
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