♪―文字を愛する

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どうにもこうにも気になってしょうがなかった。 ……文字が。 書体、サイズ、太さや並び 配置だって、自分の思う場所から数ミリずれるだけで こそばゆいような 歯がゆさを感じる。 黄金比率ならぬ、黄金配置が自分の中にあるからだ。 いや、歯がゆさだけならまだいい。 例えば…… 古くなり1文字だけ微妙にずれている店の看板。 縦書きに混じっている横文字のアルファベット。 送り仮名が間違っている商品カタログ。―― 等、etc…、など!! 目に留まるだけで不愉快になる。背中に虫唾が走りまわるからだ。 しかも、こう言った例は挙げていくとキリがない。 誤字など見つけようものなら、発狂し兼ねないほどだったのだ。 ……こんな自分に気がついたのは小学生の頃だったと思う。 当時の私はパソコンに好きな漢字を入力して、それが画面に表示されるだけで喜びに打ち震えた。 変だ。 もちろん解っている。 愛読書はレタリングブック(書体見本集) ……そんな女は見たことがない。 ロゴの一部を見ただけで、何の商標か解ってしまう。 ……病気かもしれないと本気で心配もした。 こんな性癖があまりにも辛くなり、自分は文字をこよなく愛してしまう文字オタクなんだ――という解釈で、どうにかそんな自分に折り合いをつけた。 ちなみに、こんな話を普段はしたりしない。 熱弁するだけで友人が減るであろう事は優に推測されるからだ。 こんなことは他人と語りあえない。 もちろんそう思っていた。 そうでも無かった。  びっくりした。 そんな仕事が世の中にあったのだ。 ドン○ホーテの店内を思い浮かべて欲しい 「イチおし商品!!」「激安!!」「売れています」 紀○国屋書店に入って見て欲しい。 「泣けます」「一晩でいっきに読んでしまいました」 ひとつひとつの文字が、この商品を買って欲しい!  とアピールする販売時点広告。  それらを生み出す職業、それが「POPライター」であり 私の天職だった。
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