389人が本棚に入れています
本棚に追加
どうにもこうにも気になってしょうがなかった。
……文字が。
書体、サイズ、太さや並び
配置だって、自分の思う場所から数ミリずれるだけで
こそばゆいような 歯がゆさを感じる。
黄金比率ならぬ、黄金配置が自分の中にあるからだ。
いや、歯がゆさだけならまだいい。
例えば……
古くなり1文字だけ微妙にずれている店の看板。
縦書きに混じっている横文字のアルファベット。
送り仮名が間違っている商品カタログ。―― 等、etc…、など!!
目に留まるだけで不愉快になる。背中に虫唾が走りまわるからだ。
しかも、こう言った例は挙げていくとキリがない。
誤字など見つけようものなら、発狂し兼ねないほどだったのだ。
……こんな自分に気がついたのは小学生の頃だったと思う。
当時の私はパソコンに好きな漢字を入力して、それが画面に表示されるだけで喜びに打ち震えた。
変だ。
もちろん解っている。
愛読書はレタリングブック(書体見本集)
……そんな女は見たことがない。
ロゴの一部を見ただけで、何の商標か解ってしまう。
……病気かもしれないと本気で心配もした。
こんな性癖があまりにも辛くなり、自分は文字をこよなく愛してしまう文字オタクなんだ――という解釈で、どうにかそんな自分に折り合いをつけた。
ちなみに、こんな話を普段はしたりしない。
熱弁するだけで友人が減るであろう事は優に推測されるからだ。
こんなことは他人と語りあえない。
もちろんそう思っていた。
そうでも無かった。
びっくりした。
そんな仕事が世の中にあったのだ。
ドン○ホーテの店内を思い浮かべて欲しい
「イチおし商品!!」「激安!!」「売れています」
紀○国屋書店に入って見て欲しい。
「泣けます」「一晩でいっきに読んでしまいました」
ひとつひとつの文字が、この商品を買って欲しい!
とアピールする販売時点広告。
それらを生み出す職業、それが「POPライター」であり
私の天職だった。
最初のコメントを投稿しよう!