死人島

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 魚に食い破られた体から流れ出る赤黒い流血を見て、何故だかその死体を神秘的に感じてしまった私は突拍子もなく、ここは死後の島に違いない、そう思った。  外傷の無いことについてそれならば説明がつく。私は生きていた頃の体を脱ぎ捨て、新たに死人のために用意された体を纏ったのだ。よくわからないが、そんなところだろう。しかしそう考えてしまえば、この死体は謎だ。死ねば新たに死後の世界で活動するための体を与えられるとするならば、この死体はいったい何を意味するのだろう。死後の世界で死ぬ・・・・・・嗚呼そうかわかったぞ、きっとこの死体は死後の世界で死に、また生まれ変わるためにもとの世界へ魂を飛ばされたのだ。・・・・・・と私は一寸、見当違いをしているのかもしれないな、と思ったが、どういうわけか疑うことでなおのことそういった世界の信憑性が高まったように思われて、一応そういうことにしておくことにした。疲弊がたまり、あまり考えたくなかったのだ。  そうやってどうでもいいことを考えているうちに、食いかけの豚肉のようにズタズタになった死体が浜辺に打ち上げられていた。人間は男だった。立派なスーツを着ているが、顔は貧弱そうで、食われた体ももやしのようだった。いやいまの姿を見る限り、ケチャップをかけられた食いかけのトウモロコシ、といったほうがいいかもしれない。
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