2人が本棚に入れています
本棚に追加
傭兵。
戦士。
剣士。
盗賊。
剣闘士。
遊び人。
その酒場は、道を反れた多くの溢れものたちで賑わっていた。
他の酒場なら、共に冒険する者や仕事の協力者を探し求めてくる場所なのだが、この酒場に集まる者たちは違う。
彼らは戦争屋なのだ。
国対国。
そんなデカイ戦場を求めて集まったならず者たちである。
戦争は冒険の同行より、仕事の協力より、桁違いに大きな報酬が懐に転がり込む。
それが戦争であり、報酬と戦いを求めた者たちは、正義や大義よりそれらに熱狂した。
この酒場は、そんな男たちの溜まり場だった。
下卑た笑い声や怒声が響く酒場のカウンター。
男は、そこにいた。
雑に刈り揃えた短い黒髪。日に焼けた浅黒い肌。必要最低限の防御のみを考えた革製の鎧と、それに包まれた鋼の様な肉体。鋭い眼光。
目立つ男ではなかったが、その背に背負った長大な剣が異彩を放っていた。
「今回はどっちなんだ、小僧」
「共和国側だ。
今回は帝国の方が金払いが良かったからな」
スキンヘッドの酒場のおやじに話し掛けられ、男は凶悪な面構えでニヤリと笑う。
あえて金払いの悪い方に着くのが男のやり口だった。
「また火事場ドロかよ」
「死体は金を使えねェからな。
俺が使ってやるのさ」
クックックッと笑う様は悪人そのもの。
自分は死なないという傲慢な自信で、満ち溢れた笑いだった。
「お前、まともな死に方せんぞ」
「死ぬ時は盛大に道連れにしてやるぜ」
「あきれた小僧だ」
「ありがとよ」
酒場のおやじと話し終えた男は、再び皿の料理を腹に入れる作業に取り掛かる。
帝国軍との契約終了から久しぶりに食らうまともな食事なのだ。
早く空腹を満たしたかった。
最初のコメントを投稿しよう!