英雄譚の始まり

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傭兵。 戦士。 剣士。 盗賊。 剣闘士。 遊び人。 その酒場は、道を反れた多くの溢れものたちで賑わっていた。 他の酒場なら、共に冒険する者や仕事の協力者を探し求めてくる場所なのだが、この酒場に集まる者たちは違う。 彼らは戦争屋なのだ。 国対国。 そんなデカイ戦場を求めて集まったならず者たちである。 戦争は冒険の同行より、仕事の協力より、桁違いに大きな報酬が懐に転がり込む。 それが戦争であり、報酬と戦いを求めた者たちは、正義や大義よりそれらに熱狂した。 この酒場は、そんな男たちの溜まり場だった。 下卑た笑い声や怒声が響く酒場のカウンター。 男は、そこにいた。 雑に刈り揃えた短い黒髪。日に焼けた浅黒い肌。必要最低限の防御のみを考えた革製の鎧と、それに包まれた鋼の様な肉体。鋭い眼光。 目立つ男ではなかったが、その背に背負った長大な剣が異彩を放っていた。 「今回はどっちなんだ、小僧」 「共和国側だ。 今回は帝国の方が金払いが良かったからな」 スキンヘッドの酒場のおやじに話し掛けられ、男は凶悪な面構えでニヤリと笑う。 あえて金払いの悪い方に着くのが男のやり口だった。 「また火事場ドロかよ」 「死体は金を使えねェからな。 俺が使ってやるのさ」 クックックッと笑う様は悪人そのもの。 自分は死なないという傲慢な自信で、満ち溢れた笑いだった。 「お前、まともな死に方せんぞ」 「死ぬ時は盛大に道連れにしてやるぜ」 「あきれた小僧だ」 「ありがとよ」 酒場のおやじと話し終えた男は、再び皿の料理を腹に入れる作業に取り掛かる。 帝国軍との契約終了から久しぶりに食らうまともな食事なのだ。 早く空腹を満たしたかった。
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