1章 すべての始まり

13/17
前へ
/117ページ
次へ
何も気に留めることもないし、数分後にはそんな人とすれ違った記憶すら脳内から抹消される。 遠くで歩く人の姿など、なおさらだ。 目で見て認識しても、何も感じない。 だが、それは簡単にシュウの視線を奪った。 真っ白なロングワンピースを着た少女が、すーっとシュウの目線を横切ったのだ。 それを見た瞬間、シュウは呆然と立ち尽くした。 腰まである長い桃色の髪をふわりとたなびかせて歩く少女は、うっすらとほのかに光っていたような気がした。 「・・・なんだ?」 あんぐりと開いた口が閉じない。 幽霊でも見たのか? なんだよ、あの髪の色。 さまざまな疑問を抱いているうちに、少女の影は建物の裏に消える。 ハッと正気に戻ったシュウは少女の向かった方へ走り出す。 とてもきれいだった。 神秘的で、どこか神々しかった。 もう一度見たい。 気になって仕方がない。
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加