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何も気に留めることもないし、数分後にはそんな人とすれ違った記憶すら脳内から抹消される。
遠くで歩く人の姿など、なおさらだ。
目で見て認識しても、何も感じない。
だが、それは簡単にシュウの視線を奪った。
真っ白なロングワンピースを着た少女が、すーっとシュウの目線を横切ったのだ。
それを見た瞬間、シュウは呆然と立ち尽くした。
腰まである長い桃色の髪をふわりとたなびかせて歩く少女は、うっすらとほのかに光っていたような気がした。
「・・・なんだ?」
あんぐりと開いた口が閉じない。
幽霊でも見たのか?
なんだよ、あの髪の色。
さまざまな疑問を抱いているうちに、少女の影は建物の裏に消える。
ハッと正気に戻ったシュウは少女の向かった方へ走り出す。
とてもきれいだった。
神秘的で、どこか神々しかった。
もう一度見たい。
気になって仕方がない。
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