5人が本棚に入れています
本棚に追加
思春期としては、そうした話題とどう対面していいかわからない。居心地の悪いを
紛らわせようと塀二は目の前の湯飲みを手に取った。
「中学生でもいいならあたしが産む!」
框がとんでもないことを言い出したので、塀二はぎょっとして湯呑みを元に戻した。
(こいつ、また余計に罪悪感をこじらせやがる……!)
框が妖魔に憑かれた事故の際、塀二の父が死んだことで框は責任を感じている。「お前のせいじゃない」と塀二は何度も説明していた。にも関わらずこれだ。いくらなんでもここまでのことは今までなかったが。
「あんなあ、産むんは春日居の者やないと、子に妖部の力が宿るかわからしまへん」
「なら何人でも産めばいいでしょ」
呆れてたしなめる春日居に対し、框はどんどんヒートアップしていった。塀二が以前に見た、例のピンク色の思念も湧き出している。
「何人でもて……」
とうとう、春日居のほうが絶句した。
妖部は強力であるからこそ人間社会に重大な害をもたらしかねない。そこで上部組織である地球守りから出産を管理されている関係上「増え過ぎると困る」と反論の余地があるはずだが、春日居は弱り顔を塀二へ向けた。
産ませる気か、と尋ねられているようで塀二は恥ずかしくなって顔を伏せた。
「鴨居、そういうこと堂々と言うなよ。……お前のお父さんに殺される」
言うと、興奮して立ち上がっていた框はハッとした顔を赤くして炬燵に戻った。「順序があるもんね」と言う呟きは独り言として聞き流される。
春日居が呆れた風にため息をついた。
「……なん? その反応。女の子ぎょうさん連れ込んで、あんじょう楽しうやってはったんと違うん? 枕元にドリンク剤山積みとか、あんなんあったらそら誤解するわ。……あとで地球守りに教えたろて思うてたわ」
確かに現在の室倉家は框に加え更にひとり異性の居候がいる。それにも理由はあるのだが、春日居がそんな答えを求めてはいないとわかっている塀二は軽く流して話を進めることにした。
「あのな、密告なんてしたって今の地球守りに俺たちを監督する力なんて残ってないんだ。ましてや室倉は純粋な戦闘要員とは違って特殊。処分なんかできないね」
「……地球守りに、依霊に逆らうつもりなん? 元気があってよろしおすなあ」
ケラケラと笑われるくらい、無謀なことを言っているとはわかっている。
最初のコメントを投稿しよう!