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依霊とは意思エネルギーが堆積した思念体のことだ。超常の力を振るい強度も腕力も人間とは比較にならない。地球守りとはそんな彼らからなる組織。内部崩壊で弱体化しているとはいえ、依霊派たった一体でも充分な脅威に他ならない。
しかし依霊にも弱点はある。現在室倉家の蔵に保管されている災級呪具〝光烏〟がそれで、あらゆるエネルギーを種類に問わず消滅させることができる。とはいえ、光烏は本来の主である滝箕祢にしか従わない。そして滝箕祢は地球守りの兵。どちらかでも敵に回せば勝ち目は無い。
「室倉はんのおっしゃる通り、今の地球守りは弱っとる。でもだからこそ滝箕祢が健在なこの国に総本部を移してあるんよ。……てんご言わはったらあきまへんえ」
やや低めに張った声で、春日居が脅しをかける。
「国内有力妖部――四妖、〝赤月八≪あかがつはち≫・滝箕祢≪たきみね≫・日陰菱木田≪ひかげひしきだ≫・室倉〟の血筋のうち残っとるのはもうふたつっきり。だからこそ春日居はお役目に必死どす。室倉はんにはマジメに跡継ぎを考えてもらわんと」
「てめえこの野郎。序列順に名前出しやがって」
しばらく春日居と睨み合っていると、不意に框が席を立って台所から盆を運んで来た。すぐさま料理を並べ始める。
「作っといたの忘れてた。なんか半端な時間になっちゃったけど、話は食べながらでもできるでしょ?」
一般には明かされない社会の裏側について話していても、框は日常を手放さない。そんなところに塀二はほっとしたが、春日居は戸惑っているようだった。自分の前にも皿が並べられるのを見て切れ長の目を丸くしている。
「えぇ……? ああ、そんな、お構いなく。食事やったら外で済ませて来ますえ」
「いいから、もう用意しちゃったんだから食べて行ってよ。一応お客さんなんだし」
「お客さんて……」
動揺する春日居が面白くて、塀二は構わずに「いただきます」と言うと春日居も遅れてそれに習った。なおも戸惑いながら汁物に口を付け、一気に顔を綻ばせる。
「わぁ! ひょっとしてウチの為に別個に薄味のんを作ってくれたん? なんや嬉しいわあ」
言われて見れば、春日居の分は皿が小分けにされていた。汁物も色味からして違う。框は「お客さんだからね」と短く応え澄まし顔で漬物を口へ運んだ。
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