序章 月島秋人の奇行と古代デルミア人の都市の発見について

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 以上が後に月島秋人の前にも現れる事になる古代デルミア人の都市の発見の顛末である。次に語るのは、月島秋人の奇行の原因だ。これは、月島秋人が大学1年生から2年に進級する直前の3月のある日の出来事だ。  その日、月島秋人は長すぎる春休みに、遂に暇をもて甘し、出不精の彼にしては珍しく、暮らし始めて一年になるのに大学と下宿の周辺しか知らない町を歩いてみる事にした。  午前中は駅前まで足を伸ばし、百貨店をぐるりと見回し、バスターミナルでバスの時刻表を撮影し、昼食に一人で入っても気後れしないような店を探し、カップルで出歩いている女性や、一人又は数人のグループで出歩いている女性を見るとも無しに見ている内に過ぎてしまった。  その非生産的な午前中の結果、月島秋人は、平日の昼間にバスターミナル内のフードコートで一杯200円の味の濃い掛け蕎麦を旨そうに啜る事になった。  携帯電話をパカパカと開いては閉じながら蕎麦を啜る秋人の様子は、それだけでも十分に奇妙なのだが、翌日から秋人は更に奇行の度合いを深めるのだが、それはひとえに午後に突然降りだした冬の雨から逃れるために飛び込んだ古書店が原因だった。  それは、出不精な秋人が自身の努力を労いながら下宿に帰ろうとしている時に突然降りだした。  多少の雨は気にしない秋人も、流石に面食らう程の大雨で、視界が雨で真っ白に染まる程で、体を打つ雨は冷たくて痛い。  それで、人見知りで初めての店に入るのに躊躇ってばかりの秋人だったのだが、緊急避難的に偶然視界に入った古書店に飛び込んでいた。
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