ケーキなプレイ【犬日々】

3/4
前へ
/27ページ
次へ
「…普通に言ってください…」 「ごめんねっていう」 日比谷さんは自分のケーキをフォーク取り、おれへ差し出す。 「直紀くんのケーキ、美味しそうだったんだ」 同じケーキだろ、という言葉は、口に押し込まれたケーキによって発することは出来なかった。 また口の横についてしまった生クリームを、舐められる前に指で拭き取る。 美味しい生クリーム。 ティッシュで拭いてしまうのも勿体なく思えてしまう。 少しだけ悩んで、生クリームのついた指を口に含んだ。 シャッター音が聞こえたので、見れば皐月がケータイを構えていた。 文句を言おうとすれば、ゆらりと影がかかる。 上を見上げると日比谷さんが立っていて。 おれ側に来たと思えば、生クリームのついた手を取られる。 やっぱり、舐めるのはまずかっただろうか。 「直紀くん、美味しいっていう」 ペロッと、生クリームを舐められた。 日比谷はおれの指を口に含むと、すでに生クリームなんてないはずなのに、舐める。 必要以上に、舐めてくる日比谷さんに、ムズムズとした感情が沸き上がる。 「…んっ、」 おれの、漏らした声に日比谷さんはおれの目を見て不適に笑う。 「やっ、やめ…っ!」 「美味しい…。もっと、食べたいな」 日比谷さんはケーキに手を伸ばし、掬うとおれの口へ突っ込んで来た。 生理的な涙が浮かぶ。 「…んぅ」 指を動かされ、なんとも言えない気持ちだ。 せっかくの美味しいケーキの味が、分からない。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

237人が本棚に入れています
本棚に追加