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「え、わ、わ」
砂糖が増えれば、出てくるわたあめも増えるわけで。
なんだかおれ、わたあめ作るの苦手かも。
なんて思ってきた下手くそな巻き方では、棒に巻ききれなかったわたあめが溢れてくる。
「ひ、ひび…やさん!」
睨めば、日比谷さんは笑い転げていた。
おれに巻かれていく雲のようにふわふわしたもの。
いや、べとべともしているんだけど。
溢れてくるわたあめを空いてる手で受け止めたりすれば、おれはわたあめまみれに。
漸く止まってくれたわたあめに、ほっと息をつくが、おかげでおれは、べとべとである。
「わたあめ、美味しそうっていう」
べとべとなおれの腰を掴んで引き寄せた日比谷さんは、ぺろり、と言うように指を舐める。
指先、指の間、満足したのかその舌は腕の方まで下がってきた。
「…っ、な、にするんですか…」
「だって、勿体ないっていう」
日比谷さんのせいでしょう!
という反論は、声にならなかった。
やめて、やめて、と首を振るがなかなか止めてくれない。
数分間、日比谷さんは満足気に笑っておれを解放した。
「シャワー浴びる?」
「…はい…」
「一緒に入っても?」
「駄目です」
お言葉に甘え、シャワーは借りる。
押しに弱すぎるな、おれ。
シャワー室に入るまえ、何か言ってやろうと日比谷さんを見る。
にっこりと笑われ、なにも言えなくなってしまった。
先輩に甘すぎるぞ、おれ。
そして、何故か後日会った皐月がわたあめの日のことを知っていたんだが。
なんでだ。
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