第二十二幕 予感

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「豆潰れまくってんじゃん……、痛くないの!?」 腕を握って、悲痛な表情をする秋奈。 最近のナツメはなにかに取り憑かれたように弓を引いていた。 今までどれほど無茶をして弓を引いてきたかは、このボロボロの手と、頬に残るミミズ腫れが物語っている。 「こんなになるまで……」 今更加減が分からない訳でもなし。一体彼女に何があったのか。 しかし、ナツメは隠し通せるとでも思っているのか、愛想笑いをしながら秋奈を落ち着かせようとしている。 「平気だよ。そこまで痛くないから、ほんと。ちょっと今度の選抜に向けてさ、わたしも頑張ってみようかなって思ってたんだ」 今から頑張れば少しは強くなるかなって、でもやっぱそこまで甘くないよね。 言いながら手をひらひらと振る笑顔は完全におかしい。 下手くそな嘘をつくなと、突っ込みたくなった秋奈は、代わりにナツメを女子部室へ強制連行した。 「いたっ」 消毒液を塗られて、柔らかいテーピングで固定されると、今頃になってナツメの腕に痛みが走った。 秋奈の処理は完璧で、手慣れたようにナツメに応急処置を施す。 「流石、看護志望だね。秋奈……」 「まったく。つべこべ言わずに肩も出す、あんたどんだけ引いたの、肩の筋肉痙攣してんじゃないの!」 叩かれて、肩にも鈍い痛みが。最近弓を引いた後のケアがなっていなかった所為だと秋奈。 「あのね、なに焦ってるか知らないけど、弓道はいきなりやったって進歩しないんだからね、逆に肩壊すだけ。あたしはよーく心得てるんだから、無茶して肩ぶっ壊したら、お終いなんだからね」 「うん……そうだよね、ごめん。心配掛けて」 「ほんとだよ」 「自分でも、無茶してるなって、薄々気づいてた」 秋奈が出された右肩に優しく湿布を張ってやると、ナツメがぽつりと呟く。 「じゃあ、なんで」 「じっとしてられなくて。じっとしてると、余計なこと考えそうで、怖くて」 だから……。とナツメは付け足した。
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