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ぼくらはただ、君の傍にいるだけじゃないんだよ。
「ハル――」
春一の頑なな部分に訴えかけようと、青い瞳を揺らすスノウ。
伸ばした手を更に伸ばして、春一の手が重なるのをじっと待つ。
「ここにいるよ、君の味方は」
――帰ろう、みんなで。
小さく笑んでみせるスノウに、春一は少しばかりめんどくさそうな顔をし、水を滴らせた腕上げ、スノウの手首に指を絡めた、――だが。
次の瞬間にはスノウの体がぐいんとつんのめり。
続けて先と同じ水没音、水柱が上がる。
「ぶっふゅううううううううううっおおおお!!――ごぼッふ」
口から鼻から水を噴出させ浮上したスノウの頭部を真顔で掴んで、春一はまたも水中に押し戻す。
「罠に嵌って、あげく肝心な時に寝こけてた奴にとやかく言われたくはない」
ごもっとも……。
そう付け足したくもなったが、スノウの気持ちはナツメにもよく分かる。
「ハルさん、わたしも、スノウと同じだよ。一人でいいだなんて言わないでよ、わたし達がいるのに」
今は、三人一緒で『祓い屋』なんだから。
言って、ナツメは前髪を額に張り付かせた二人に両手を伸ばして強引に掴み、岸に引き寄せる。
「わたし達、運命共同体なんだから、ね――」
と。そこまでは絵面的に非常に良かったのだが。三秒後。
泥濘んでどろどろだった足場はナツメの体をあらぬ方向に滑らせ。
皆まで言う必要もない。
文字通りの運命共同体となってしまった。
上がるナツメの悲鳴。
三度目に立つ水柱。穏やかにたゆたっていた水面が大きく波打つ。
そんな彼らを遠くから見ていた、畔近くに生えた水草にしがみついていた小さな有尾類。
かわいい欠伸を一つすると、澄み切った水中にぽちょりと身を投げ、どこかへ泳ぎ去っていった。
第十九幕へ続く――。
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