第二十四幕 チェーンメール 後編

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「え、あれ。蛍(けい)?」 ドアの端から顔だけを覗かせたてきたのは、中学一年の弟の蛍だった。 気がついたナツメは時計を見やり、咎めるように言う。 「明日から一週間クリスマス合宿なんでしょ?寝なきゃだめじゃない、寝坊するよ?」 「あの、……眠れなくなっちゃって」 「どうしたの?」 「ちょっと……ねーちゃん、今、すこし話、いいかな……」 普段家の中ではヘラヘラとして明るい弟が、何故かこの時いつもとは様子が違う暗い表情をして立っていた為、ナツメはなにがあったのかと戸棚を閉めて、彼をリビングのソファーに座るよう促し。 冷蔵庫の扉を開けた。 「はい、あったまるよ」 マグカップに注がれたホットミルクを寝巻き姿の弟の前に置き。 ガウンを羽織ったナツメも同じように隣に座る。 しんと静まった部屋に時計の秒針の音だけが響き。カップの中の白い湯気がゆらゆら揺れる。 「なんか、怖い夢でも見た?」 明らかに元気の欠片もない弟に、思い当たる言葉をそれとなく投げかけるも。 彼は、両手で携帯電話を握り締めたまま。下を向いている。 「蛍?」 よく見ると、弟は小刻みに震えていた。 「あ、の……ねーちゃん」 「うん」 「その、もしかしたら、信じて、もらえないかもだけど……」 「うん、いいよ、話してごらん」 この辺りで、「なあんてね!うっそだよーん!」とふざけて笑わないということは、深刻な悩みなのだろうとナツメは知った上で、彼の念押しを受け止めた。
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