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弟が何故こんなにも怯え泣いているのか、その理由がわかった。
こんな衝撃的過ぎるものを送られて、怖くないはずがない。
現にナツメは、床に投げ捨てられた携帯を見て、ソファーにしがみ付くように心臓を飛び跳ねさせているのだから。
みんな……こんなものを。
本当にメールで回しあっているというのか。
「……だけなんだ、――ぼくだけ、なんだ……」
顔を上げ、消え入りそうな声で弟は告げる。
「みんなに聞いたら……そんな写真は送られてきたことないって……、だけど調べたら、……ッ、写真が付いてきたメールは本物の呪いのメールで……もらったら、一週間後に絶対に殺されるんだって……ッ」
今までの犠牲者のように。
添付された写真と、同じようにして。
「100人になんて、こんなのっ、送れない……っ、でも……やだよ……こんなふうに死にたくなんかないよ……死にたく、ないよっ……うっうう……ッ、怖いよ」
これ以上ないくらいに取り乱し、泣きじゃくる蛍。
「たすけて……っ、ねえちゃん……ッ」
こんなものを信じるなんて馬鹿げている。
でも、死にたくない。
メールが夕方に届いてから、ずっとそんな葛藤を一人繰り返し、ナツメならば何か知っているかもしれないという縋る思いで打ち明けたのだそうだ。
「このこと、お父さんには」
「まだ……でも、ッ、きっと信じてもらえない」
「……そうね、お父さんには、まだ言わないほうがいいかもね……」
しゃっくり混じりに応える弟の頭を撫でながらナツメは、春一との会話を思い出す。
(ハルさんが言っていたのって……)
これのことだったのか。
「……」
なにがどうなっているのかはわからない。
だが、ただならぬ気配を感じるのは確か。
なにか、とてつもなく大きな影が広がり始めている。
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