第二十四幕 チェーンメール 後編

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だとしても今は、不安な顔だけはしてはいけない。 「蛍、大丈夫だよ。泣かないで」 困惑を悟られぬように宥めながら、ナツメは弟の顔を上げさせ、笑ってみせる。 「こんなのはきっと、でたらめだよ」 「でも、だけど、……ほんとうに、ほんとうかも」 「もしそうだったら、その時はねーちゃんがなんとかしてあげる」 「ねーちゃんが……」 「うん、だから蛍は、明日からの合宿には、わたしの携帯を持って行きなさい、蛍のはわたしが使うから」 その方が怖くないはずだから、と。 ナツメは震える細い指に、新調したばかりの携帯電話を握らせる。 「そっ、そんなことしたら、ねーちゃんがッ……!」 「わたしは大丈夫、任せて、絶対になんとかする。それに、調べてみたら嘘だったってわかるかもしれないからね。大丈夫。大丈夫だから」 頭を抱き、背中を撫でつけ。 何度もそう繰り返す。 「ねーちゃんは、いいの、それで……だいじょうぶなのっ……ッ」 「うん。全然平気、もしなにかあったって、わたしが倒しちゃうから」 「そんなことできんの」 「できるできる、ねーちゃんは強いもの、返り討ちにしちゃうよ。……だから安心して」 弟が怯えて泣いているなら、姉の自分だけは毅然としていなければ。 壁に飾られた家族写真。 今は亡き母がそこから笑いかけている。 母親が他界してからずっと、蛍は父親と二人で守ってきた。 だから、今だって。目に見えない恐怖からでも姉として、弟を守らなけば。 渦巻く不安を掻き消すように、ナツメは思い、落ちた弟の携帯電話を握り締めた。
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