第二十四幕 チェーンメール 後編

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「――212号室になります。ドリンクバーは階段を上がって右手に御座います。延長の場合は……」 マニュアル通りに淡々と説明するカウンターの店員に軽く会釈して。 カードキーを受け取り、これまで一度も利用したことのない店の清潔そうな廊下をたどたどしく歩いていくナツメ。 入ったのは隣町からバスで四十分の、最近オープンしたネットカフェ……らしいが。 (最近のネットカフェって、なんかすごいな……) 値が張ることを覚悟して、なるべく設備が整っている所を選んでみたはいいが、天井には煌びやかな照明、壁には絵画、床は大理石にベルベットのレッドカーペット。 カードキーからして、なんだか他と違うと思っていたが、ネットカフェというよりこれではホテルのようである。 調べ物をするならば、携帯よりネット環境の整ったパソコンが良いと思い足を踏み入れたが、行き慣れない場所なだけに、なんだか居た堪れない気になってくる。 自宅にもパソコンは確かにある、しかし父親の業務用の為、勝手に使うと怒られる可能性もあったので、こうして外へ繰り出すしかなかったのだ。 緊張で体を火照らせ、落ち着きなく前を後ろを交互に見ながら進んでいると――。 「っ、テェな、んだよオイ」
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