第二十四幕 チェーンメール 後編

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曲がり角に差し掛かった時に生じた軽い衝撃。と、低い怒声。 飛び跳ねるようにして前を向くと。 高校生らしき団体。の、先頭にいたふくよかな体型の青年がナツメをひどく睨んでいた。 よそ見をしていてぶつかったのだ、そりゃあ文句を言われるのも仕方ない、ナツメは直ぐに謝る姿勢をとったが、 「てんめェ!どこ見てんだ……このクソアマ!」 こけしのように細い目を吊り上げた彼は、たいそう虫の居所が悪かったのか。 そこで巨体をぶつけるようにしてナツメに掴みかかろうとしてきたのだ。 「――ちょ、っ、沼っち待った!」 「ダメですよ先輩!!」 胸ぐらを掴まれかけたその瞬間。 割って入ってきたのは、彼の後ろにいたはずの数人の男子達。 ひょろ長かったり、はたまた甲高い声で身長が極端に低かったりという特徴的な外見の彼らは、巨体の彼の腕を止め、慌てて宥めにかかる。 「ちょっとぶつかっただけだろ……いくらピリピリしてるからって、その、暴力は、さ……」 「そっ、そうですよ……落ち着いてください」 力では勝てないと悟っているような様子でも、必死に説得する彼らに挟まれ、ナツメは再度頭を下げて。 「すいません、ほんとうすいません。よそ見してしまって、ごめんなさい、気をつけます」 ぶつかった相手に丁寧に謝罪する。 その態度がまた気に食わなかったのか、巨体の彼は鼻をふんっと鳴らして、わざとナツメの肩にぶつかり、そこを乱暴に通り過ぎた。 「――お前らさっさと行くぞ、今日のぶんの書き込みは済んだんだ」 「ま、まってください」 「いつまで続くんですかね……こんなの」 「いくらやっても無駄な気がするよな……」 「無駄だろ、こっちが好意で教えてやってんのに、誰も聞きゃしねえ……」 「またアカウント増やします……?」 「でも、それも意味ない気が……」 「書込みの仕方を変えたらどうでしょうか……」 「んだよ……!それ俺の書き方が悪いっていうのか!?」 「ちっ、ちがいます……!」 「沼っち、落ち着けよ……だから――」 四人の男子が後に続き、通路で会話を投げ合っているそばからまた、巨体の青年の怒鳴り声が上がる。
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