第二十四幕 チェーンメール 後編

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蛍は、どうなる……。 小さな恐怖が体の中に芽生えた気がして。 ナツメはそんな自分を咎めたくて、氷で薄まったコーラの紙カップを一気に呷り。息を吐き出す。 昨晩、あんなことを言っておいて一人になった途端弱気になるな。 今も遠くで怖がっている弟を安心させる為に、自分だけは冷静に構えていなければ。 今は何を見ても信じ込むのはやめよう、まだ本当にそうだと決まった訳ではないと、ナツメは気になる箇所だけメモを取り、閲覧していたページを閉じて、また別のページを開いていく。 閉じては開き、開いては閉じ。 その度に目に入る、あのメールに対する警告や、個人の考察、キリコさんはメールを通じて会いに来る怨霊だということ、そして実際に友人が殺されたという悔みの文章。 それらがナツメを揺さぶっていく。 おかしい。 誰か一人が書いていることならまだしも、こんなに大勢の人が、ブログ、掲示板、チャット、SNSサイトで同じことを書き連ねているのは、嘘や悪戯とは到底思えない。 そうは言っても所詮それらは手に取ることのできない、データ上に成り立つ文字の集まり。 ナツメが求めている真実には程遠い――、しかし。 数がもたらす影響力というのは想像以上に強大なものだ。 どんなに信じたくなくても、馬鹿げていると思っても。 こうもあちこちで話題が上がっているというのは、絶対にそうであるかまだ根拠も持てない気持ちを少しずつ傾けていく。 ナツメのマウスを握る手はいつしか汗で湿り気を帯びていた。
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