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しかし、春一の方を見ると。
既に梓の声は届いていないのか、先程まで二人で遊んでいたボードの上の表裏一体の石達を一生懸命に引っくり返していた。
その行動に果たして意味はあるのだろうか。中心に境界線を引いたようにして、白と黒はきっかり同じ数に分断され、向かい合う軍勢。
その綺麗なコントラストを梓が不思議そうに覗き込む。
「なんですか?」
「別に、ちょっと面白いと思ったんだ。オセロなんて、人の世そのものじゃないか」
陣取りゲーム――。
数多く石を所持したものが強者。
どちらかが負け、どちらかが勝つ。
至極シンプルな白と黒だけの世界。
数で決まる世界。
「これが、ですか?」
「そうさ、人間だって数に左右されるだろ?」
「あぁ、多数決とかそんなんありますよね」
「そうだね。ところで梓……少し簡単な質問に答えてもらってもいいかな」
「へ……?あ、はあ、いいです、けど」
「じゃあまず一つ。梓は、幽霊はいるものだと信じているかい?」
突然投げられた春一の問いに、梓はぽぁっと口を開けた。
「いや、信じるもなにも、実際春一さんそういうの視てるじゃないですか!」
「ふぅん、じゃあ信じてるんだ」
「当たり前ですよ、これで俺が信じて無かったら春一さんのことも否定することになっちゃいますよ!」
「成る程」
ぱちんと、そこで春一がボードの白い石をいくつか引っくり返した。
黒い石が増えていく。
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