第十六幕 かごめ唄

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「あー、そうそう。春一クンも誘ったんだけどさぁ」 「ハルさん?」 話の途中で出てきた意外な名前にナツメはきょとんとする。 「うん、でも今日は用事があるからって」 秋奈がこの前の伊豆旅行の時の写真をテーブルに広げながら続ける。 昨晩、見舞いに行くことを春一にも電話で伝えたのだが、春一は用事があるからと断ったのだと。 それを聞いてナツメは、思い当たった。 きっと依頼だ。 そういえばこの間、春一は夏休みの最後に依頼ラッシュが来るから覚悟しろというような事を口にしていた。 宿題をとうに終え、暇を片手で放るぐらいに弄んでいた春一は、裏サイトの掲示板に大量に押し寄せられた依頼の処理を今頃しているのだろう。 春一にとって、祓い屋の運営は、日頃の暇を潰すお遊びのようなもの。 やりたいときにやり、やりたくなければ依頼を受け流す。 まさに自由業。 風の向くまま気の向くままの春一にぴったりである。 「じゃあ、ハルさんは来ないかなぁ……」 ナツメが緊急で入院する際、一応場所は伝えてみたのだが、春一から返信されてきたメールは絵文字も何も付いていない。 ただ一言――。 『お大事に』。 とだけ素っ気なく書かれてあり。他に心配するような言葉は愚か、見舞いに行くという言葉もすらも添えられてはいなかった。 別にショックは受けなかった、むしろ春一らしい返事だと思った。 しかし、少しだけ、見舞いに来てくれたらいいのにと、心の中で思うナツメだった。 「つれないなぁ春一クン、ちょっとぐらい顔見せてくれればいいのに」 「忙しいんだよ、きっと」 「ああ、あいつんち寺だもんな、家の手伝いとかかなぁ」 「んーどうだろ……はは……」 祓い屋の仕事しているなんてこの場では言えない。 「まあいいや、都合が悪いなら仕方ないもんね、はい。ナツメこれあげるね」 「わは!やったね!」 秋奈から焼き増しされた写真の束を渡され。ナツメは嬉々としてそれに飛びついた。 前々から心待ちにしていた伊豆の旅行での写真、それらを捲りながらじっくりと眺める。
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