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一枚一枚、思い出が込められた写真。
みんなで行った海。太陽の光を浴びてキラキラと光る青い海。
それに負けないくらい、綺麗に写し出された自分達がとても輝いて見えた。
「よく撮れてるね、ありがとう秋奈!」
「ふふん、どーいたしまして」
「おいおい、俺ん時より多くね?」
冬吾が口をぽかんと開けて指差す。確かに、見てわかるように写真の束にはそれなりに厚みがある。
「だーって、ナツメには特別に春一クンの隠し撮りショットが入ってるもん」
「あー、ホントに入れたのか……」
「……?、なにそれ!?」
ニヤリとされ、冬吾は呆れるように目を右手で覆い、ナツメは唖然とした。
写真の後半は、秋奈の言った通り、春一ばかりが写った写真が多く、中にはいつ撮影したかも分からないようなマニアックなモノまで紛れていた。
「えっ!なに!?」
「おい……」
「あ、秋奈……」
白い目で見る二人。
ナツメが見つけたのは、自分が春一と写っているもの……、なのだが……。
察するに、これはナツメが海に落ちた時、春一に救出された時のものだ。
溺れかけたナツメを春一が浅瀬まで引き上げ介抱している場面。
この時の出来事から、呑気に写真を撮っている場合ではないことは誰だって分かるだろう、しかし、こんな写真があるということは、秋奈は密かにこの時シャッターを押していた、という事になる。
「秋奈。お前、確か泣きそうなぐらい叫んでたよな」
「不謹慎だよ!いくらなんでも!」
「あ、はは!なんていうか、ついね、つい」
「ついってお前な」
「うん……」
秋奈は笑っているが、二人は相変わらず怪訝そうな目を向ける。
この写真を一体どうすればいいのだろう。
第一、春一がこの写真を見たらなんと言うだろうか。逆にナツメが変な目で見られそうな気がする……。
これも思い出だなんだと秋奈に言葉を並べられて、結局捨てるわけにもいかず、その写真(これに関しては不本意であったが)を含めてナツメは楽しかった旅行の写真をありがたく貰うことにした。
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