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右手首から溢れ、未だに止まらない出血。
流れ落ちた血は、可愛い模様のシーツへ赤く染まっていく。
それに比例して、少女の身体は冷たくなっていった。
「どうして泣いているの?」
「!」
男が少女にすがり付いてから、何時間経っただろう。
涙を流し続けたことにより、瞳が腫れぼったくなった男の後ろから、声がした。
亡くなった少女と男以外、家には誰もいるはずがなかった。
男はゆっくりと後ろを振り替える。
そこには、少女と同い年くらいの女の子がいた。
「なん、で……」
男は信じられなかった。
何故なら、男の目の前には亡くなった少女がいたから。
同じ少女が2人。
1人は死んでいて、1人は動いている。
「どういうことだ……?」
「嫌だわ。あなたが望んだんじゃない」
「俺が……?」
男は理解出来なかった。
だって、男が望んだことは……。
「まぁ、いいわ」
少女は笑う。
楽しそうではなく、男を小馬鹿にしたように。
「ご利用ありがとうございます」
亡くなった少女の名前は、蓮見椿子。
そして、蓮見椿子と同じ顔をした少女の名前は。
───蓮見椿子といった。
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