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そんなこんなの経緯により、AROMAに残る事になったオレ。
とりあえず平静な自分を取り戻す為、いつもの席に…とおもった矢先
「良かったら、ここ座ってください!!」
菜奈って子は既に、カウンターの席の椅子を引き出し進めてくれていて…
そこへ座らざるを得なくなってしまった。
当たり前だが、この子はオレが毎日通うほどの常連で、尚且つ、いつも同じ席に座ってる事を知らないんだから
しょうがないっちゃあ、しょうがないんだけど…。
妙に納得がいかないまま、仕方なく言われた通りに進められた椅子に座ると、やっぱり落ち着かなくて。
用意周到に席に置かれていた水を、ゴクリと一口、音を立てて飲んだ。
いつもだったら、珈琲が来るまでの時間はいつもの席で、窓から見える小さな庭を、ただボーっと見つめてたりしている。
その間は何も考えない。
社内ではずっと働かせている頭を、唯一休められる瞬間だからだ。
それに慣らされていたオレは、不慣れな今の席に、いわゆる手持無沙汰状態で…
自然と目に入るものと言えば、カウンターの中のキッチンで、ココアを淹れているのであろう、菜奈って子の姿だけ。
だから、何分かの沈黙の末
「ねぇ、菜奈ちゃんは、いつからこの店で働いてるの?」
菜奈って子に、話しかけるしか思いつかなかった。
。
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