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ふと気がつけば。
店内には、甘いココアの香りが広がり始めていた。
いつもの珈琲のではないその香りに、意外と嫌悪感はなく、むしろ心地よささえ感じていた。
カウンターにそっと出されたココアは、
これまた予想以上に美味しかった。
「うまっ……」
思わず漏れた言葉に菜奈ちゃんは
「ほんとですかぁ?良かったぁ…」
と、また胸をなで下ろし
「呼び止めたのに美味しくなかったら、どうしようかと思ってました」
とオレに笑いかける。
本当に。
菜奈ちゃんが淹れたココアは、お世辞抜きで美味しかった。
微妙な苦さに絶妙な甘さ。
まろやかさとコク、どれをとっても普段からココアなんて飲まないオレだって
これが世界中で数多く売られているココアの中でも、そこそこイケるくらいな味なのは分かる。
「これ、AROMAで商品化されてんの?」
「いえ…されてないですけど…」
「もったいなっ」
してないんだったら、うちの経営するホテルとかで出したいくらいなんですけど!
…なんて速攻で考えてしまうのは、社長の悲しい性だろうか…。
。
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